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経営者として人ととして
ある企業の話。
急に社長が、ワンフロアの従業員全員に「みんな集まって!至急だ。電話も辞めろ」
と、大声でどなった。
社員は、一斉に目の前の仕事を止めて集まる。
大きい取引をしていた会社が、諸事情で我々の顧客として
降りる、という話だった。
こちらにも非もあるし、先方も経営陣が変わったこともあり
いろんな要素があった。社長が一言。
「今回の件で、営業部長のせいで、取りこぼしたとか、課長のフォローが
だめだったから、落したんだ、とか、よからぬ噂を立てるな。お客様の悪口も
言うな」
「少し前、我々が業績に苦しんでいたとき、この大口のお客様があったからこそ、
今の我々がある。だから、特にお客様を責めるのは辞めろ!
むしろ今回のお客様には感謝しなければいけないのだ!」
「そして、同時に我々がこれまでやっていたことを変える必要は、全くない!
売上が落ちる、という現実はあるが、我々はこの業界のために、
正しいことをやっていると信じている。これが契機で何も変える必要はない。
必ず将来また、このお客様が、やはり我々がやっていたことが
正しい、と感じてくれて、再び我々のお客様としてなるための努力をしようじゃないか!」
社員の士気が上がったことは、社員の目を見れば、一目瞭然でした。
私も、なんて素晴らしい企業だろう、と感動すら覚えました。
大口のお客様が降りるという現実を目の当たりにして、「たくさんの経験を
させていただき、支えてくれたのだから、お客様に感謝しなさい!」そして
「これからも、信念をまげず、引き続きお客様のために努力しよう!」と
号令をかける経営者を見て、何か本質的なものを揺さぶられる、
すばらしい感動を覚えました。
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